人が集まれば -

ウィキペディアについては元来が「みんなの言うことは大体正しい」という前提を基に編纂されている辞典であり、
大方の項目は完全ではないにしろ正しい記述になっているのではないでしょうか。
本書では正確な記述を行う際の議論や法律の問題などに踏み込み、
現時点ですでに起こっている問題点を指摘している。
確かに本書で挙げられている点については、なにがしかの答えを出して、
乗り越えていくべき懸案ではあるのでしょうが、
ウィキペディア全体の信頼性が云々というのは正直拡大的にとらえすぎているように感じられた。
ウィキペディアを通じた良質なメディア論 -

「誰でも気軽に参加できる百科事典」ウィキペディアの実態を
詳細にまとめた一冊。
ウィキペディアによる企業・行政の不公正な書き込みの実態、
2ちゃんねるさながらのユーザーの書き込み、
ウィキペディア記事を裁判の証拠資料とした事例の記述など、
ウィキペディアに関する数々の事例が紹介されており、
現在のウィキペディアの課題を浮かび上がらせている。
ただし、この著書は
「記述内容の信頼性に問題」「プライバシーを保護できないシステム」などと
ウィキペディアの現状・課題をただ語って終わるのではなく、
権力やメディアに関する話に踏み込んで論が展開しており、
メディア論の著書としても非常に良質なものになっているように感じた。
(特に、表面的にはインターネットと対立する企業・マスメディアが
社会情勢の変化に合わせて融和していくとした著者の分析は秀逸だと思う)
もちろん、この本は学術書ではないので、
学問的な妥当性については疑問の余地があるが、
適度な読みやすさと内容の深さの両方を兼ね備えているので、
ネットの問題、メディアの問題に興味がある人は
一度呼んでみることをお勧めしたい。
事件がおこり問題ユーザはいるが,既存の百科事典をこえるものがあるウィキペディア -

本書では日本語版のウィキペディアでおこった事件,管理者の仕事のたいへんさや管理者になるひとがすくない現状などが書かれている.事件に関しては部分的には知っていたが,10 件をこえる事件や 10 人をこえる問題ユーザの解説を読むことで全体像を把握することができた.
解決のむずかしい問題もあるが,いまのところはそれほど深刻な状態ではない.日本語版に特有の問題もあり,他言語版とはちがう発展のみちをたどる可能性も示唆している.末尾の「ウィキペディアはどこに向かうのか」では「百科事典的だが,既存の百科事典の価値を超える何か」,「他に代用のきかない何か」がうみだされると予想しているが,それははっきりとことばで表現されてはいないとしても,すでにあるように私にはおもえる.